公益財団法人 日本呼吸器財団:呼吸器疾患の病態解明・研究推進、啓発活動


呼吸器疾患の知識


このエントリーをはてなブックマークに追加

流行するマイコプラズマ感染症

増加するマイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を病原体とする呼吸器感染症であり、小児や若い人の肺炎の原因としては、比較的多いものの1つである。
日本におけるマイコプラズマ肺炎は、従来は4年周期で流行し、オリンピックの開催年に流行したことからオリンピック病と言われたこともあったが、1992年以降はこの周期性が崩れ、大きな全国流行はみられていなかった。しかしながら2011年は夏頃から全国的に報告数が大きく増加し、冬期の報告数のピークは2006年や2010年と比べても2倍以上高い大流行となった。さらに2012年の報告数は2011年の同時期よりもさらに増加している(図1)。
近年の大流行の原因についてはまだ明らかではないが、血清診断法が進歩し、患者を発見しやすくなったこと、また、高齢者に流行が拡大したことなどの他、薬剤耐性マイコプラズマの出現が挙げられるだろう。

(図1)

マイコプラズマ肺炎の診断

マイコプラズマ肺炎の確定診断には、通常はペア血清(感染初期と回復期)によるマイコプラズマ抗体の上昇を確認するほか、IgM抗体による迅速検査(イムノカード)も用いられているが、早期には陽性にならないため偽陰性が多く、抗体が長期に存在し偽陽性となることも多いため信頼性が低い。PCR法やLAMP法などの核酸増幅検査は信頼性が高く2011年10月から保険適用となったが、結果が出るまで時間がかかるという問題がある。

肺炎マイコプラズマ

長引く咳の原因に

マイコプラズマ感染では、発熱や全身倦怠感(だるさ)、頭痛、痰を伴わない咳などの症状がみられる。咳は熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴で、長引く咳の原因となる。マイコプラズマに感染しても肺炎までいたらず、気管支炎ですむ人が多いが、咳が長引くことが多い。

耐性株の出現が問題に

通常、臨床でのマイコプラズマ肺炎の治療には、おもにマクロライド系の抗菌薬が使用されているが、近年その耐性株の割合が著明に増加している。幸い、耐性株であっても、全く効果がないわけでなく、2~3日発熱が延長するものの治癒するという。

以前はマイコプラズマによる肺炎は「異型肺炎」とも呼ばれ、比較的元気で一般状態も悪くないことが特徴であるといわれていたが、長引けば重症肺炎となることもあるため、正確な診断と適切な治療が大切である(H)。


戻る

ご寄附をお考えの方
当財団へのご支援は
とてもかんたんです。

詳細はこちら